無いとこ育ち ー〇〇不足は組織の成長のタネかもしれない


全国総リソース不足時代
ヒト、モノ、カネ、情報、スピード、知的財産、ブランド、企業文化などなど…経営に必要なリソースをどれも十分に持っている、何も困っていないという会社は無いでしょう。少子高齢化による労働人口減少や業務の多様化による人材不足。もっと資金や設備があるならば事業の拡大に投資したり、生産性の向上もできるのに。みんな何かが足りず困っています。得られるリソースはあるに越したことはない。新たなリソースを獲得することで事業展開を加速させたり、安定的に経営できることは間違いありません。

その反面、リソースが無いことで培われるチカラもあったなと振り返る今日この頃です。もしかすると、組織には「無いから育つ」「無いところが伸びる」といった性質があるのではないか。裏を返せば、リソースが豊富にあれば伸びなかったチカラや培われなかった組織能力もあるように思えます。

自転車を持っていなかったアッキーの成長
突然ですが、私の小学生時代のクラスメイトにアッキーという男の子がいました。アッキーは自転車を持っていませんでした。正確には自転車に乗ることはできるのですが、親御さんが自転車でケガをしたら危ないということで、自転車を買ってもらえていなかったのです。それゆえどこに遊びに行くにもアッキーは走っていました。僕たちが自転車で行く遠い公園にも、いつも走って移動していました。走って走って公園にたどり着いて、そこからみんなで鬼ごっこをして走る。そんな日常を過ごしていました。容易く想像できると思いますが、アッキーの走力は群を抜いて成長していました。鬼ごっこ中、公園まで散々走ってきたアッキーに僕は何度も捕まるわけです。学校の運動会は当たり前に学年で一番。市の陸上大会でも上位の常連でした。自転車というリソースが不足していたことで、アッキーの走るチカラは他を上回る成長を遂げていたのです。

トマトもシンガポールも北欧も
他の事例を見ても、無いところが育っているものはありそうです。「無かん水栽培」は、水が足りないためにトマトが水を求めて土深くまで根を伸ばすため、旨味の強い実ができます。水やりをせずトマトに強いストレスを与えることで高糖度で濃厚なトマトを作る技術があります。

「アジアの金融ハブ」としての地位を確立したシンガポールには天然資源がほとんどありません。水さえも輸入に依存するという過酷な条件下ゆえに、人材と金融・物流のインフラを極限まで高める戦略をとって、今の国のカタチがあると言えます。

彩り豊かで感性的な北欧のインテリアデザインは、厳しい冬の寒さと限られた日照時間の中で生まれました。家の中での暮らしを豊かにする「実用性」と「居心地の良い空間(ヒュッゲ)」を追求することで、世界的に人気なブランドがいくつも発展しました。

無いところは成長のチャンス?!
話は会社に戻って、スマイルズにはお金がありません。資金というリソースを知恵と工夫でカバーし続けてきました。(行動指針の一つに「低投資高感度」という言葉があるくらい)外注できれば簡単なものも自分たちで作ったり。一般的にはオペレーション会社さんに委託するイベント業務も、チーム総出で自分たちで運営したり。逆にその方が時間がかかってしまい生産性が低かったこともあったでしょう。結局外注した方が安かったかもね、なんて話もあったでしょう。

しかしながら、お金が無いから自分たちでやってきたことによって、ものづくりのプロセスを身をもって理解できたり、自ら運営することでお客さんのリアルなフィードバックを得られたり、成功のキモや失敗のツボを実感できたりしています。この実践知や実業知をチカラとして、コンサル・プロデュースの仕事をやらせていただいているわけです。

もし、スマイルズにお金が潤沢にあって、どんどん外注をしてきていたら、今の企画力や運営力は無かったでしょう。仮に、簡単に売れるような優れたプロダクトを持っていたとしたら、あとは営業するだけでいいので、営業マンが沢山いる組織になっていたかもしれません。そうしたらブランディングのノウハウは培われず、きっと今のような提案力は持ていません。

無いものねだりよりも、無いとこ育ちと捉えてみる
とはいえ、「もっと広いオフィスが欲しいな」とか「投資できるお金もあったら嬉しいな」などと考えることも無いわけではありません。一方で、満たされることで何かが失われる不安が少なからずあります。人間怠惰なもので、リソースがあったら楽をしてしまうものです。せっかく有したチカラもリソースが満たされてしまうと、萎んでいってしまうこともありそうです。無いが育てるものがあるとして、適度な不足や渇望というものは、組織がチカラを保ち続けるためには必要なのかもしれません。

無いことを嘆いたり、有ることを羨ましく思ってしまうものですが、「組織の能力は足りないものを補うことでチカラがついていく!」とポジティブに捉え、自社の「無い」を前向きに探してみてはいかがでしょうか。それが未来の成長のタネになってくれるかもしれません。

無いから育つ組織のチカラ
無いをタネに デキルの芽を伸ばしてみては
無いことをネタに 次のヤレルを探してみては
無くてよかった 無くてありがとう
そんな風に思える日が来ますように

PROFILE
吉田 剛成(よしだ たけなり)
株式会社スマイルズ 取締役/CHRO

2008年スマイルズ入社。Soup Stock Tokyoでの店長業務、人事部採用担当を経て、2013年から2015年にかけては、スマイルズの交換留職で経済産業省クリエイティブ産業課へ出向。中小企業の海外展開事業や海外向け情報発信の立ち上げに参画。現在は外部案件のコンサルティング、企画・プロデュース、ワークショップなどを担当。取締役として組織づくりや事業企画にも関わる。時折ダジャレや韻をベースとしたコピーライティングも手掛ける。大きな声では言えないが姑息さを兼ね備えたプロジェクトマネジメント術にも定評がある。週末は息子のサッカークラブサポーターが趣味。

※内容、表現、肩書、各種名称は、公開当時のものをそのまま掲載しています。
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