SよりAを尊んで -人事評価の勘どころ


60人いれば60通り。目指す姿はバラバラがいい
世にはさまざまな人事評価手法やツールがあるけれど、「多様な個性を大切にしています」と語りつつ評価のモノサシが一軸的だったり、どちらかと言うと評価者側の効率性や利便性が優先されていたり、何だかちょっとしっくりこない…、なんてことも…?

自分たちのかつての人事評価ツールも同じ違和感がありました。当たり前ですが、メンバーひとりひとり体型は違うし、目指すべきスタイリングも違うわけです。せっかく個性的なメンバーが集まって「誰にも似てない」を標榜しているのに、評価で目指す姿が1つなのは違う気がする。“既製”品への物足りなさがふつふつと。

体型が変われば似合う服も変わる
元々スマイルズは、スープストックトーキョーやPASS THE BATON、giraffeといったリテール(小売ビジネス)が生業。その時の評価の項目は、接客や業務管理、アルバイトパートナーのチームビルディング、コミュニケーションといっても社内に限られていました。

創業から20年弱の月日の中で、店舗運営を主とする「自社事業」から外部企業や行政を相手とする「コンサル・プロデュース」へ業容が変化。それに伴って評価のシクミや考え方が自分たちの身体に合わなくなっている感覚が大きくなり、無視できないものになっていきました。(ヒトに例えるならば、体型が変わって、それまで来ていた洋服が似合わなくなる感じでしょうか)

自作は大変。でも大切
これまでやってきたことをベースに、これからやったことないことができるようになりたい。現状プラスアルファ、ちょっと先の自分の体型をイメージしながらトレーニング。それと共に、服(モノサシ)を新調するならば、どんなものがあるだろう。

「自分たちに足りないチカラは何か」「身に付けたいスキルセットはどんなものか」「押さえておくべき知識領域は」「自分たちの強みや他との違いは何か」「私たちが大切にしたい姿勢や仲間を評価したい要素はどこか」。そんな観点で社内ワークショップを重ね、皆でキーワードを発散しながら、2021年にオリジナルの人事評価指標とシクミを開発しました。(実はここに至るまで、苦節2年ほど…カタチになった瞬間は喜々でした!)

【スマイルズ・クリエイティブの評価のフレームワーク】
SkillのA・B・C・D

A: Academism (知識と理論化)
B:Business(実業実行と戦略)
C:Creative(視点と創造)
D:Designing(記号化と伝達表現)

AttitudeのC・D・E・F
C:Communication(意志疎通力)
D:Desire(熱量)
E:Empowerment(自律)
F:Fantastic(魅力発信)

(併せてお読みいただけると、もっと分かりやすい!)
スマイルズのHRは面白い!と自分で言ってみる
私たちの採用や組織、評価に関して、社長野崎が語ったコラム

評価項目MAPの概要

スキルのA・B・C・DとアティチュードのC・D・E・F
大きな分類として、Skill(技能)とAttitude(姿勢)上下2つに分かれています。さらにそれぞれが4つに分かれ、全部で8つの項目で構成されています。

Academism (知識と理論化)は、コンサルティングを始めるにあたって明らかに?私たちに不足していたチカラで、これは組織的に意識して高めていかねばならぬ!と思って導入したもので【構造化力】や【理論開発力】などがあります。当時はマーケティングやビジネスフレームワークの基礎を学ぶ勉強会なんかも実施しました。

Business(実業実行と戦略)は実業を通じて培ってきたチカラがベースにあります。【やったことないことやる力】、【二の手三の手力】、【即時推進力】、【逆転一発力】など、一番数が多いカテゴリーです。

Creative(視点と創造)とDesigning(記号化と伝達表現)は、発想や観点のCと、それを伝えたり可視化するDを区別しています。Creativeは【ドリーミー思考】、【妄想爆誕】、Designingは【後付け説明力】、【超統合開発表現力】など。

S(スキル)よりも、A(アティチュード)が大事?
ここでやっと本題になるのですが、Communication(意志疎通力)、Desire(熱量)、Empowerment(自律)、Fantastic(魅力発信)のAttitudeのC・D・E・Fを大事にしているなと気づきました。だって、スキルがあっても意志や意欲がなければチカラは発揮されないですし、会社や事業は良い状況ばかりではなくピンチもあって、そんな時に責任感やユーモアを発動できる人は有難いじゃないですか。

【無遠慮発信】、【鼓舞力】、【ほだし力】、【おせっかい力】、【火中栗拾力】、【先付け力】、【伴走信頼力】、【弱魅力】などなど不思議なフレーズを含む46項目。おそらく評価項目でアティチュードが半分を占めている会社は非常に珍しいはず。振り返ってみると、お客様(クライアントの方も、お店やイベントにいらっしゃる方も)からご評価いただくのは、この項目が多いような気がします。

ロジカルシンキングもクリエイティブのアウトプットも勿論重要で、こちらも磨きをかけていく必要性はあります。ただ私たちが手掛ける仕事において、スキルだけで表出したり、提案したり、納品することはなく、プロジェクトに関わるメンバーのアティチュードとともに、誰かへ伝わっていき届けられていくものなので、向き合う姿勢や熱量が多分に品質貢献しています。

オーダーメイドが一番似合う
個人においても、スキルや経験が足りなくても、アティチュードで挽回できるものもあるでしょう。またクライアントやプロジェクトに向き合う姿勢によって、自身のスキルやアウトプットを何倍にも輝かせることだってできるでしょう。

現に店舗から異動してきたメンバーで当初、分析や構造化のスキルは乏しかったのですが、イベント等の現場で粘り強くカイゼンし続ける姿勢や臨機応変さで他との違いを作り、チームに認められていった人がいます。そして今ではさまざまな知識や理論も身に付けていっています。

今のスマイルズにおいては、S(スキル)よりもA(アティチュード)の方が評価において尊いのかもしれません。みなさんもA(アティチュード)に着目してみると、埋もれていた強みや得意の発見があるかも。そして評価は自分たちの身の丈に合ったものがオススメです。

WEBで見れる各人の目標

組み合わせは自分で決める
全員が同じく目指す必修項目がありながらも、毎度自分でいくつかの項目を選んで取り組む運用にしています。同じ授業を選択する人もいれば、全然違うことを目指しているメンバーもいる、まさに大学の履修のようなシステムになっています。自分で決めているので、旧来の評価システムに比べて自分事になった気がします。

ちなみに年々アップデートを続けた結果、当初75項目だったものが、2024年現在では徐々に増殖し105項目に。(一体何個まで増えていくのでしょうか…笑)

自分の得意を知る。他人の得意を知る
また選択式の評価のシクミを取り入れたことで、より各自の得意な領域やストロングポイントが明確になりました。自分の得意には、自信と矜持をもって譲らずに磨き続ける。そして周りからそのチカラを期待されて頼りにされたい。

誰が何が得意なのか、誰がどんなチカラの取得に取り組んでいるのかがWEBサイトで閲覧できるようになっているので、他人の得意を可視化することにも繋がりました。自分が苦手なものは、得意な誰かを積極的に頼ればいい。逆に、自分の得意は気持ちよく使われたらいい。それが組織・チームでやっている価値であり、面白さでもあります。

私たちはスーパースターじゃないのだから
各々のデッコミ&ヒッコミを組み合わせたり、互いのスキマを埋め合ったりしながら、時に大きく力強くしなやかに伸びていく。角が当たってしまったり重なってしまったり、時には摩擦も起こるけど、その熱さえもエネルギーに変えて、ひとりでは出来ないことをチームでおこせたら面白い。

ひとりのスーパースターがいなくても、
誰かのアティチュードが火種になり、チームのスキルやリソースとかけ合わさって
みんなでスーパーなことを成し遂げたい。

未熟で不器用、アノニマスな私たちも、
化学反応次第では、スター以上の大きな光を放ち得る。

SよりAを尊んで、今日も何かを起こしてく。

※内容、表現、肩書、各種名称は、公開当時のものをそのまま掲載しています。

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