うろうろ都市考察録 #0 はじめに ―オフィスのある中目黒にて


統計に欠けていた場所性と一回性とリアリティ

2024年の後半から、よく旅に出るようになりました。
最初に訪れたのはメキシコとキューバでどちらも1人旅。

メキシコで記憶に残っている場所の一つが、Oaxacaから30kmほど東に位置する町、Tlacolula de Matamorosの礼拝堂。特に目に止まったのは、首が取れている聖人の像。サポテカ文明やミシュテカ文明の流れを汲むこのエリアでは、土着の信仰とスペイン由来のカトリックの布教が織り混ざった結果として、首や心臓と血が吹き出すビビッドな表現が目立ちます。

一方で、出身地は東京の葛西。ここは現在、東京中心部へ通勤通学する人を中心とした住宅街となっています。大人になってから今昔マップや歴史を調べてはじめて、戦前までは田んぼと江戸前を代表する漁場で構成されていたらしいと知りました。開発と埋め立てが進んで私が生まれた頃には、もうその形跡は残っておらず、地下鉄東西線開通の1969年以前の歴史はどこにいったのだろうと思うくらいです。

そんな個人的背景があるからか、例えば先ほどの礼拝堂のように、特定の土地が持つ時間の流れがぎゅっと濃縮されてオリジナルの形で立ち現れている現場に遭遇することが、とても好きなのだと思います。

話は変わって、越後妻有の大地の芸術祭で田中泯さんの「場踊り」をみたことがあります。この場所でこの瞬間だから立ち現れる、一瞬ごとに一回きりの生命のリアリティ。それは、個別具体性を消去した先にある公衆衛生や生物統計を大学で専門にしていた私が失いつつあった、場所が持つ手触り感のようなものでした。

Tlacolula de MatamorosのCapilla del Señor de Tlacolula内部(2024.11.03)

連載テーマ | 都市における時間の収集

メキシコとキューバから帰ってからは、フィールドリサーチだと言い訳をして、積極的に世界各地の都市をうろうろしています。そんな中で探求しているポイントは大きく3つ。いずれも、都市の現在の姿そのものというよりは、背景にある時間の流れや形成過程・プロセスの側にフォーカスしています。

・時間の積み重ねが特徴的な形で見える場所
・大きなイベントがあった後の都市の立ち上がり方
・都市を即興的に使いこなしている事例とその成立背景

同じ頃、まちづくりや都市開発、パブリックスペースに関するご相談が会社としても増加し、私自身もそれらが担当案件の8割を占めるようになってきました。

結果として、当該分野のデスクリサーチ・フィールドリサーチ(仕事)・フィールドリサーチ(プライベート)・フィールドリサーチを踏まえた追加のデスクリサーチ、全てが増加の一途をたどっています。

漠然としたリサーチ活動にまみれた生活が1年以上続いた結果、直接的な担当案件としてはアウトプットしきれないけれど何かのヒントにはなるかもしれない情報たちが、整理できていない状態で溜まっていくようになりました。これらをどうにか人に伝えられるようにしたいと思い、各地の旅先(フィールドリサーチです!)で観察して気になった断片を、追加で調べて編み直したレポートを公開する連載「うろうろ都市考察録」を開始します。

PROFILE
内山 美紀(うちやま みき)
株式会社スマイルズ プロジェクトマネージャー/リサーチャー

2022年入社。大学での専門は公衆衛生と生物統計学。スマイルズでは、企業のCI/BIや新規事業の戦略立案、飲食店やホテルの企画開発、海外でのイベント開催等、幅広い分野のプロジェクトマネージャーとして経験を積んだのち、近年は広域のまちづくり・都市開発のプロジェクトを中心に担当している。地域の米と食文化にフォーカスした企画「米惣動」は現在お休み中。旅先での荷物の小ささに定評がある。

※内容、表現、肩書、各種名称は、公開当時のものをそのまま掲載しています。
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